彼女が欲しい通信

 ウキヨ・マモル、21歳の将来性ある若者だ。

 なぜなら、彼は、WPO 世界バンタム級の1位なのだ。

 そう、マモルはプロボクサーなのだ。

 しかも、正にこれから、チャンピオンベルトの奪取に挑戦する。

 しかし、マモルは、非常に大きな問題に直面してしまっている。

 それは計量だ。

 今回は減量がうまく行かず、苦しんだのだが、それでも、あと僅か30グラムのところまで漕ぎ着けた。

 次は最後の計量だ。

 次の計量でパスしなければ、タイトルマッチに出場できなくなる。

 そう、今は瀬戸際にいるのだ。

 そんな選手を抱えるジムの会長は、イライラとしながらマモルに話しかけた。

「ああ、あとたったの30グラムなのにな。もうサウナに入る時間はないし」

「ええ、計量まであと10分ですから」

「ガムを噛んで唾も吐き出したし」

「ええ、唾はもう出ません」

「頭の髪の毛も全部剃ったし」

「はい、「このハゲ〜ッ!」状態です」

「脇の毛も剃ったし」

「はい、とっくにありません」

「ヒゲは元々生やしていないし」

「ええ、毎日欠かさず剃っていますから」

「鼻毛も全部抜いたし」

「はい、痛かったです」

「眉毛も剃ったし」

「ええ、気色の悪い顔になっちゃいました」

「ウンコしたし」

「トイレに行っても何も出ませんでしたよ、食べてないから」

「オシッコもしたし」

「それも出ませんでしたけどね、飲んでないから」

「耳毛は?」

「そんなものを抜いて何グラムになるんですか?」

「あ、そうだ、泣けよ! 涙の分だけ軽くなるぞ」

「もう涙の分の水分も残っていませんよ、泣きたい気分すけどね」

「はあっ」

「ふうっ」

「なんかないか?」

「思い付くものなら、とっくにしていますよ」

「あ!」

「な、なんですか?」

 ここで、会長はピンと閃いた顔をして、マモルはギクッとした顔をした。

 すると、会長はその右手でマモルのトランクスの前を手前に引いて、中を覗き込んだ。

「見っけた!」

「そこですか」

「当然だろ、もうここしかないよ」

「で、でも、そこは」

「いいじゃないか、どうせ彼女なんかいないのだろ」

「し、しかしですね、今日、チャンピオンになったら、やらせてくれる女子がいるのですよ」

「だから何だよ?」

「だから、下の毛くらいはあった方がと」

「そんなの仕方がないだろ、お前なあ、試合が出来なきゃ勝ちようがないのだぞ」

「はあ」

「剃るしかないよ」

「やはり、そうなりますか?」

「なるなる」

「じゃあ、トイレで剃ってきます」

「ちょっと待て、俺が剃ってやる」

「どうしてですか?」

「自分で剃ったのでは深剃りがきかないだろ」

「え、本当に会長が剃るのですか?」

「俺とお前の仲じゃないか、今更、恥ずかしがっている場合じゃないだろ」

「はあ・・・」

「ほれ、ここで脱いで、そこの長椅子に寝ろよ、時間がないから早くしろ!」

 そして、2人は極めて迅速に剃毛の準備を終えた。

「じゃあ、手っ取り早く剃るからな」

「はい」

「・・・ おい、男の前で立たせるなよ!」

「だったら、それに触らないでくださいよ」

「だって、何か手掛かりがないと剃りにくいもの」

「あーあっ」

「こっちだって「あーあっ」だよ、男同士でこんなの ・・・ よし、終わったよ、ツルツルだぞ」

 かくして、マモルは計量にパスして、世界タイトルマッチに出場し、ノックアウトでチャンピオンを下して、世界バンタム級チャンピオンになった。

 そして、祝勝会も終わり、「試合に勝ったらエッチをさせてあげる」と約束してくれたミサキと大阪は森ノ宮のラブホに入った。

 しかし・・・

「私、帰る!」

「ミサキちゃん、どうしてだよ、チャンピオンになったら、「まずエッチをさせてあげて、それで良かったら彼女になってあげる」と約束してくれただろ。それなのに、エッチもまだだというのに、俺のどこがいけないんだよ!」

「どこがいけないとかの問題じゃないでしょ! いい、この私はね、身体に体毛がせめて1本くらいはある男子の彼女になりたいのよ。それなのに何よ、下の毛すら無いじゃないの、論外よ!」

「だから、それは、計量にパスするためだと話しただろ!」

「いいえ、そんなの嘘よ! 何もかも剃っちゃうだなんて趣味の変態としか思えないじゃないの! 彼女が欲しいのなら変態世界チャンピオン好きの女の子を探してちょうだい。そうしたら、きっと、うまく行くでしょうよ、じゃあね、バイバイ」

「そんな・・・」

 このようにして、世界バンタム級チャンピオンのマモルは変態チャンピオンとしてミサキに振られてしまったのだった。

=おしまい= 

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